雨の合い間に【釣行記】

ポンプ小屋マスター

2006年09月13日 23:57

まったく、よく降る雨だ。秋雨前線か何か知らないが、そろそろ今年の梅雨の降水量を超えるんじゃないかと思う。

年間二度も梅雨があっては列島水浸しであって、家のものにカビが生える。洗濯物が干せない。エラ呼吸が発達する。などの弊害が次々に起こる。困る。夏は夏で暑いから嫌だと駄々をこねていたので、人とはやはり身勝手なものだ。

僕もなかなか釣りに行けなくて困る。降り止みに急いで竿を出すと雨が降り始め、慌ててレインジャケットを着込む。すぐに止み、暑いのでジャケットを脱ぐ。速やかに降り始める。などとひとり川岸で早着替えを披露していると釣りしてる時間なんてあったものじゃない。

だが長雨で僕の活性は下降気味だ。釣りに行けないという事がここまで人のやる気を奪うとは思わなかった。日々死んだようにぼーっと暮らしている。脳にカビが生えているのかも知れない。

やはりこういう時は釣りでしか癒されない。カビが生えた脳を奮い起こし、僕は僅かな降り止みを狙って川岸に立つ。雨と水の匂い、涼しい川面の風。脳のカビが少し薄くなったように思う。もうひと息、カビキラーのような刺激が必要だ。

連日の雨であの憎きアオコはすっかり姿を消したが、もちろん増水しており、濁っている。ただ水の流れは思いのほか緩い。何とか釣りになりそうだ。

今日は最近、釣りに行けない間に買い込んだルアーを使うのが第一義で、釣果は二の次である。水辺に立ってロッド振ってルアー投げてりゃいい気分なのだ。釣りとはどのような行為なのか時々、自分でも本質が分からなくなるが、久々の釣りなのでいいのである。

まずジャッカル/ナックル5"をキャスト。かなり自重があり、飛距離は素晴らしい。ゆっくりと流れに乗せてリーリングすると、水面直下を体をくねらせて泳いでくる。イマカツ/ジャバロンよりも動きはゆるいが、水押しは強いようだ。

あまり早くリーリングすると回転したり水面に出たりしてしまう。また、デコイ/ロクマルフックを使用したが、大きさは合っているもののフックセットがシビアで、少しでも曲がっていると思うように動かないので注意が必要だ。

けっこう釣れそうなので楽しく動きを確かめていると、上流の岸際でナックル付近の水面がぐんと盛り上がってがぼんと魚が跳ねた。うわ。食った。

こういうスイムテストなど、殺気が消えているときに限って魚はよく食ってくるが、その分、心構えが充分でなくてフックセットが遅れ、バラすことはよくある。慌てて必死の巻き合わせ。乗ったか?だがラインのテンションは緩い。

案の定、バラしたかと思ったが、ラインがいやにふける。流れに乗ったというにはふけるのが早すぎる。これはバスがルアーをくわえたまま、こっちに泳いでいるのであろう。僕は流れよりもラインのふける速度よりもバスの泳ぐ速度よりも早く、狂ったようにリールを巻いた。ハイギアが欲しくなる瞬間である。

足元まで来たバスがやっと自分の境遇に気付いたのか、急反転した。途端にラインが張り詰め、大きくロッドが曲がる。ところがバスは慌てすぎているのか、わざわざランディングしやすい岸際に突進して来た。後はラインを張り、竿で浮かせれば無事ランディングである。手もなく岸にズリ上げた。

なんと阿呆なバスであろう、と哀れみつつ岸の魚をつかもうとしたところ、大きく魚体が暴れてあっさりとルアーが口から飛んだ。やっぱりまともにフッキングしていなかったのだ。ふわああと声にならない声を上げつつ、なんとか魚をがっしりつかみ、早々に写真を撮る。リリースし終えてから冷汗が出た。阿呆なのは僕である。

魚は35cm前後であった。このサイズが表層の横の釣りに反応すると言うことは、雨のおかげでかなり水温が下がり、秋っぽくなっていると思われる。ただ、魚は岸際にいた。増水中でうまくフィーディングできず、流れが弱い場所にたむろしているのだろう。

ということは、流れが弱い場所で、魚が着きそうな変化を見つければラッシュの可能性もある。具体的には流れが直接当たらないワンドやインサイド・ベントの下流側。そこにベイトがいれば荒食い必至ではあるまいか。ムヒョー。

などと下品な興奮の仕方をしていると、水面に続々と波紋が立ち始めた。おお。小魚がライズしておる。これはパラダイス到来か。などと興奮も極みに達した辺りで、もちろんこれは雨である。しかも本降りである。

哀れ僕の興奮は雨によって物理的に冷まされ、あっという間にシオシオである。僕は泣きそうになりつつ口を引き結んで数度、同じところにキャストしたが、無駄な抵抗であった。ほうほうの体でクルマに逃げ帰り、ずぶ濡れのまま秋雨前線を呪うしかなかった。

レインジャケットを着込む気力もなく、この日はここで打ち止め。雨の合い間にはなかなかいい釣りができそうなことが分かったのは収穫ではあるが、ほんの10投ぐらいしかしてないので本当のところはよく分からない。ナックルの力量もまだ判断できない。

それよりも何よりも今回悲しいのは、deps/バズジェットJr.とか自作ザラⅡ改造とかを投げる間がなかったことである。とても楽しみにしていたのにひどい。とか僕はどうしても釣りの本質を見誤っているような気はするけど、今度晴天の日に心行くまで新ルアーを投げてみようと思う。釣果は二の次。まだ僕の脳にはカビが生えているようだ。

Tackle Data:
ダイコー/ギャレットGLC-632M+ダイワ/アルファス-ito 103+東レ/フロロベーシック10lbs

関連記事