釣り雑誌。
毎月、二十日から二十五日にかけては釣り雑誌の発売日が続く。僕も必ず書店や釣具店に出かけては、どんな雑誌がどんな記事を載せているかチェックする。
今現在、毎月必ず購読しているという雑誌はない。数ある雑誌の中から、面白かったりためになる記事を載せているものを選んで買っており、そりゃそうだ全部買ってたら破産してしまう。僕は活字中毒気味なので、せっかく買ったのに読むところがないというのが一番つらい。だから内容を吟味する。
610円と少々高価だが、よく買うのが「月刊釣り情報」(ミリオンエコー出版)。いくつかの地域版が出ている。餌釣り中心の雑誌だが、各地の詳細なフィールドレポートは他の追随を許さない。ポイント地図や写真も豊富で、あらゆる魚種の釣果情報が克明に掲載されている。
もちろん餌釣りの情報もルアー釣りに役立つ。スズキや青物、イカの釣果はもちろん、例えばどこかの堤防でアジが釣れている。ではアジを意識したメソッドを使おう、などと大きな判断材料になる。バス釣りにだって、落ちアユの釣果などが参考になる。それに単純に読んでいて楽しいので、「釣り情報」(辰巳出版)などいくつかの餌釣り雑誌のうち数冊は毎月、読んでいる。
中に一冊、雑誌ではなくムックの「エギングマガジン4」(岳洋社)が入っているけれど、これはもうブログであーだこーだエギングについて書いている以上、義務というものである。そういえばエギング関連の書籍を初めて買ったような気がする。
ちょっと読んだだけでも、内容の濃さに驚く。あらゆるシチュエーションのあらゆるメソッドが詳細にレポートされ、議論されている。しかもそのほとんどは全国の名人に取材したものだ。重い経験に裏打ちされた言葉で語られる内容は、僕のような万年初心者にとって掛け値なしにバイブルと言える。
読んでいると、いくらでも自分の思い違いや常識のなさに慄然とできる。大きな顔で何を恥ずかしいことを書いておったのかと、今すぐこのブログの烏賊カテゴリを全消去したいぐらいだ。だからあんまり読み込まないことにする。
これは逃げでもあるが、同時に頭でっかちになりたくないという思いもある。僕は本や雑誌で得た知識をすぐ自分の物のように勘違いする名人だから、こんな良質な情報を読んだら影響されまくって分かったようなことを得意げに言い出し、いっぱしのエギンガーを気取り始めるだろう。
自分の体験より知識が上回ってしまうのは不幸なことだ。僕は今、エギングを苦しみつつ楽しんでいるところである。雑誌に書いてある通りにやれば、すぐに釣れるのかも知れない。でもやっぱり、できることなら何もかも自分で悩んで考えて体得したい。これは情報が氾濫するバスフィッシング界で得た教訓である。
その結果、どの雑誌にも書いていて子どもでも知っているようなことしか見つけられなかったとしても、それはそれで面白いのではないかと思う。自分なりに工夫して真実にたどり着く課程をもっと楽しみたい。このブログは、その課程のとんちんかんぶりを読んで笑っていただく場所であればいいと思う。
だから僕は、買ったけどこのムックを熟読しないように努めている。走り読みするだけでももう既に2,3点、ああそーだったのかと蒙を啓かれた事柄があるのだ。恐ろしい。できれば定期的にざっと眺めて、自分との「答え合わせ」に使いたい。そして自分なりに自信ができたころに熟読して、自分の未熟さを確認できればいい。
他の2誌は以前に毎月のように購読していたものである。「Sports & Fishing News」(フィッシュマン)はルアー系なんでも雑誌で、バス関係はトップ系が多い。一時期はリリース禁止や害魚論に対して先頭切って論陣を張っていたので、応援のために買っていたが、最近は迷走しているようにも感じる。
バス問題については稿を改めて書きたいので控えるけれど、同誌は読む限り、バス問題への反論として、バスという魚の価値を知って貰うために、そしてこれ以上、バス以外に釣りの対象魚をやり玉に挙げさせないために、釣りというものの楽しさ、プレジャー性をアピールするという方針を取ってきたと思う。
特に琵琶湖のリリ禁以来、トッパー系を中心とした釣行記や、釣り道具やルアーをものづくりの視点で書く記事が増えた。釣りの楽しさは結局、釣りをしてみなければ分からないからで、その楽しさを、魚の価値を知らない人がバスを攻撃している。だから釣りにはこんなに文化的にも価値があるんだ、釣り人はこんなに楽しんでいるんだという姿を積極的に見せようとしたのだろう。
それはいいことだ。ただ、そのアピールが釣り人以外の、他者へのものでないのが残念だ。前述のようなアピールは釣り人以外に対して行ってこそ効果があるものだろうと思うが、同誌だけでなく釣り雑誌のほとんど全てが、釣りをしない他者からの視点が欠けているように感じる。
もちろん釣り雑誌だから本来は釣りのことだけを書いていればいいのだけど、このままでは釣り人だけが「釣りって楽しいね」と言い合って楽しんでいればいいという狭い殻に閉じこもってしまうような気がする。そして過去にも、他者の視点や、釣り人の社会的な立ち位置を確認せず、釣りという閉鎖的な楽しみに閉じこもってきたからこそ、バス問題をはじめとする軋轢が起こってきたのだ。
もはや環境的にも、社会的にも、釣り人は身勝手に釣りを楽しんでいられる立場にはない。釣りを続けたいなら、積極的に社会との関わりを持って、釣りができる、釣り人が楽しめる環境を地域との合意の上で形成していくしかない。
無茶な注文のようだが、メディアには釣り人を代表する責務があるのだから、どうか狭いコミュニティの中に釣りを押し込めないでほしい。自由に釣りをするために、釣りに対する思考も自由であってほしい。自らの影響力をもって釣り人をいい方向に導いてほしい。釣り人が社会的な立場を確立するための道筋を見つける道標になってほしい。
なんかまた熱くなって困った。「Rod & Reel」(地球丸)についても言いたいことは山ほどあるんだけど、また次の機会にするしかなさそうだ。こうしてメディアに対して熱くなるのも、釣り関係メディアで働きたいとの少年の頃の夢がかなえられなかったための僻みだと思う。実に醜い。
岡目八目で注文をつけるのは簡単なのだから、基本的には毎月僕たちを楽しませてくれる釣りメディアの皆さんに敬意と感謝を表して、僕は来月もいくつかの釣り雑誌を購読するだろう。願わくば面白くてためになる記事を読ませてください。これからもずっと。
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