エバリエンス。

ポンプ小屋マスター

2006年07月17日 21:36

今日もすごく暑かったのに仕事をしていたので僕はもう、理不尽だと言うのにも疲れた。自らの無力を痛感した。世の無常を何も言えず受け入れた。だからもう寝る。

と寝る前にやっぱなんか書きたくなったので僕は告白する。もう2年ぐらい僕はグリーム/エバリエンスシリーズのロッドを使っている。

何だか懺悔するかのような書き方だけど、もちろんこのロッドを使っていて何が問題なわけでもない。問題があるとすれば販売元がとっくの昔に倒産していて、破損しても交換修理が不可能なことぐらいだ。

既にご存知の方も減ってきていると思うけど、このロッドはかつてJBワールドチャンプを2度獲得した柳栄次プロが開発したもので、それなりに注目されたはずだけど発売直後に販売元のナッソがあっさりと倒産してしまい、そのまま忘れ去られた悲運のシリーズである。知らんけど。

柳氏はこのロッドを作る前まではメガバス契約プロだったが、何が気に入らなかったのか何か事情があったのか。あのままメガバス使っておけばと思ったのは僕だけではあるまい。彼はその後、ロビンソン/ビゴットシリーズへと使うロッドを変えた、までは知ってるけどその後どうしたのかはよく知らない。あんまりトーナメント見ないし。タックルベリー各店を巡業していたのは聞いたことがあるけれど・・・

エバリエンスに話を戻すと、シリーズは全5本であるらしい。追加モデルが出る前になくなってしまったと思われる。僕はそのうち3本を所有している。
・EBS61UL “closer” 1/32~1/16oz 3~4lbs
・EBC65M  “proteus” 3/16~5/8oz 8~16lbs
・EBC65MH “alley-oop” 1/4~1oz 10~20lbs

元々は溺愛しているメガバス/F1-61XSのバックアップが欲しいと思ったのがきっかけだった。予備に同じ竿を買うのが一番だが、同じ竿だと完全にストックになってしまい出番がない。それもちょっとつまらないと思っていたときに、中古店で61ULを見つけた。

思い出したのが、柳氏はこの竿をそれまで使っていたデストロイヤーと同じような感じで作ったと言う話。特に61ULはF1にそっくりだという。じゃあメガバス使ってればいいじゃない。とか万人が思ってしまうだろうけど、きっと大人の事情があったに違いないよ。そっとしておこうよ。

何にしろ安かった。ほぼ未使用の超美品で8000円。よほど不人気である。手に取ってみるとなかなか綺麗な仕上がりで、各社の高級ラインナップと遜色ない。思わずリアクションバイト。まあ購入の決定打は「ネタになる」だったんだけどな。そして「どうせなら」とオークションなどでもう2本を入手した。ここまでマイナーな竿だとかえって持っていて気分がいい。

エバリエンスの製造元はダイコーだと言う話がある。少なくともきっちりと作られた竿であるのは間違いない。web上にも余りにも情報がなく、雑誌にしても僕が持っている資料の中ではRod&Reel・2001年5月号で1Pを使って紹介しているのみ。見開きの隣ページにはダイコー/コブレッティが紹介されている。同期だったのか。

ちなみに定価は34,500~36,000円。残りの2本はEBS61L“gerius”とEBC62ML“round seven”という。61LはF2-62XSに、62MLはF3-61Xに酷似しているという。じゃあなんでメg(ry きっと事情g(ry

雑誌紹介時のインプレでは、「とても素直なロッド」という評判。「クセがない」「バーサタイル」といった賛辞が並ぶ。こうしたインプレが出る場合、そのロッドは「個性がない」「特に褒めるところがない」ことが多いのは気のせいだろうか。

実際に使ってみての印象は、まず第一に軽いこと。特に61ULは最新の超軽量ロッドと大差ない。ダイワ/ルビアス2004と組み合わせると、それまで使っていたF1+シルバークリークSが鈍重に思えて仕方ないぐらい。これはこのシリーズの一番の美点だと思う。

しかし61ULは、結局のところF1の代わりにはならなかった。ワンランク柔らかい印象で、時にはノーシンカーワームのフッキングに苦労する。テーパーは確かによくある先調子ではなく、F1に近いレギュラー気味のものだが、もっとライトリグに適した感じ。

河口湖などクリアレイクでのライトリグにも長けた柳氏には、F1がこう写っていたのかもしれない。僕はノーシンカーの使用は諦めたのもの、フックが露出したワッキーリグや2g程度までのダウンショットなどで、特に冬場に重宝している。僕が持つ最もライトなロッドだ。

感度はF1よりもいい。べなべなな竿では決してなく、バット部のパワーは高水準だが、F1の持つ凶暴なベリー~バットのパワー/トルク感には及ばない。ラインウェイトの表示上からもフロロ4lbsを使うので、カバー周りでは少し使いづらい。ハードボトムでダウンショットのシンカーを掛け外ししていくような釣りにはベストだと思う。

65Mは本当にクセのない、そして個性のない竿。無印良品といった感じで、一本あると何かと便利な反面、所有する喜びは少ない。中高弾性っぽい張りがあってクランクベイトよりスピナーベイトに向く印象。スピナベは1/2ozまでストレスなく引けるのが好印象。むしろ乗せる方面のジグワーム(1/4oz中心)にぴったりかもしれない。

65MHは柳氏の真骨頂であるジグ竿。このクラスとしてはリアグリップが短いのが僕好み。ただ、この竿はピッチング専用と言った感じで、特にガチガチでもないし極端な先調子でもないのに重量バランスや張りなどからか、普通のキャストがしづらい。全体に張りとパワーがあって、感度も充分。しかし僕はこの竿を買ってからボートに乗っていないので宝の持ち腐れである。陸っぱりでも普通に使えるが、もったいない限りだ。

シリーズに共通なのは軽量高感度、しゃきっとした張りとシンプルなコスメ。ブランクスは黒、スレッドや金属部分はすべて銀。地味と言えば地味だが、個性を主張しすぎない竿が欲しい人にはいい選択だと思う。

安いから(ネタのつもりで)ついなんとなく揃えたのに、使い続けているのは特に欠点がないから。だが細部の造りにも手を抜いていないし、品質性能ともに高水準だけどメインにならないのは、やっぱり特に欠点がないからかもしれない。

僕がデストロイヤーやコブレッティを使うのは、コスメも含めた「ケレン味」に惚れている部分が大きい。例えばF4-65XDti。バスロッドにここまでのトルクは必要ない。ウイードと一緒に50upを吊り下げてもびくともしない竿である。例えばRCS60/002変幻トランスミッション。必要以上の金属的な張りでパワーを補っている変態的なロッドである。UL表示の意味がない。

そういう特殊な竿を日々使っていると、エバリエンスのような無印的な竿がとても新鮮に写る。普段は個性的な竿を使って喜んでいて、それにふと疲れたとき、エバリエンスシリーズは肩の凝らない使用感と釣りに集中できる環境を与えてくれる。

しかもその際、分かる人が見たら「ちょwwwエバリエンスwwww」とウケてくれるかもという密かな楽しみも僕に与えてくれる。これ以上のサブロッドはない。マジお勧め。近々61Lも入手しちゃおうと思っている。

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