また単発【釣行記】
今日は変な天気だ。青空が覗いて厳しい残暑の日差しが照りつけるかと思えば、黒雲がぐうっと湧いて激しい雨が叩きつける。空は晴れ間と雨雲が二分してせめぎ合っている。どうも落ち着かない。
夕方に少し暇ができて、いつもならすぐに釣りに出かけるところだが、そんな天気なのでいつ雨が降るか分からない。最初から雨の中と覚悟するならいいが、普通に釣りをしていて土砂降りが来てずぶ濡れになる。これは非情にみじめだ。
加えて今日は土曜日である。きっと川も海も人が大勢いるだろう。混んだ釣り場は好きじゃない。こういうときは家でタックルの整理でもするか、たまった仕事を片付けるか。大人しくしていた方が得策だ。
まったくそう思うんだけど、気付けばいつもの堤防で海を相手に餌木をシャクっている僕がいて何それ。驚いた。詐欺だ返せ。
もう自分で自分がワケわかんないんだけど、今日は大潮である。9月の大潮に海に行かないというのは、目の前のプリンを食べずに冷蔵庫にしまうぐらい耐え難いのであって、初めから釣りに行かないという選択肢はあり得ないのであった。じゃあ変な前振りしないでよね。
いつもの堤防が混雑していたら帰ろうと思ったが、意外なことにチヌ師が一人しかいなかった。いくら大潮とはいえ、こんな天気の夕方に釣りに来るのはやはり少しおかしいかもしれない。しかし空を見ると晴れ間の割合が多くなっていて、とりあえず雨の心配はなさそうだ。
その辺は深く考えずに脳天気に餌木をシャクる。ちょっとだけ水面は風で波立っていて、足下のイカは目視できない。少しとはいえ風があるのでラインの取り回しに苦労する。ラインの変化で乗りを読むのは難しそうだ。
開始して数投。遠投して最初のシャクり後、テンションフォール中にいきなり餌木がドッギュウゥゥゥンとひったくられた。反射的に強シャクリをぶちかます。どしんと暴力的な重みが伝わって、海煙がベリーまで曲がった。うわこれデカいんじゃないのか。
とか思ったけどリールは難なく巻けて、竿が数秒後に敵を海面にざぶんと浮かせた。まだ40mぐらい沖である。活性が高く、餌木をひったくって乗ったと同時に走ったので大物かと思ったが、この辺が海煙は非情である。浮かせる速度でイカの大きさがすぐ分かる。
甲長20cm、500g弱のトンカツ(やや大)サイズであった。なかなか幸先はいい。何より元気が良く、フォール中に持って行かれるのがはっきり分かるなんて久しぶりだ。本人も濃い茶色でかなり怒っており、ヤマシタ/エギ王Q速3号をがっちりくわえ込み、活性の高さを示している。
ということはこのサイズが海中を活発に泳ぎ回っておるのではないか。よっしゃやる気出てきた。ここしばらく新子の成長状況を調査していてずっと空振り続きだったが、今日は僕にとってやっと秋シーズン開幕なのではないか。
とか言っていてこの後が続かないのが僕である。釣れた辺りをくまなく丁寧に探るが、うんともすんとも言わない。餌木もさまざまに使ったが、反応なしであった。また単発か。
この辺が僕の下手なところである。1匹釣るだけなら初心者でもできるが、その状況を再現し、あるいはちょっとした状況変化に対応して結果を残してこそ釣りである。それがなかなかできない。悔しい。
あるいはこの堤防付近の、イカのストック量が絶対的に少ないと言うことは考えられる。群れが居着いている、あるいはどんどん差してくるような釣り場ならたくさん人が来るだろうが、ここは今日のようにあまり人がいないことが多い。どうもそんなに釣れる場所ではない。
みんな一応、チェックしに来て、すぐ次へとランガンしてしまうようだ。その戦略は正解だと思うが、何分僕は仕事帰りの釣りなので次へと足を運ぶ時間がない。かといって実績はあるのだから、ここをチェックしないわけにもいかない。悩みどころである。
と言っているうちに日が暮れた。しかし今日は大潮で月夜である。久々にナイトエギングに突入してみよう。そして少しでもここのストック量を探ってみよう。僕はそう考えて赤テープの餌木を取り出し、用意していると風が強くなり始めた。
それまでの風が、堤防上に置いている物が飛ばされそうなほどの風に変わった。これは釣りづらい。ラインを張って底をズル引きするしかないかと思っていると、どうもおかしい。なかなか月が出ない。
今日は十六夜だったか立ち待ちだったか、少しぐらいは月の出は遅いだろう。などとのんきに考えたところで、嫌な予感がした。的中して欲しくない嫌な予感。慌てて撤収の用意をしつつ、空を見た。夜目にもはっきりと、凶悪な黒雲が空を圧していた。
ほとんど走るように堤防から車に戻ったが、もちろん途中で土砂降りの雨が来襲。嫌な予感はピカチュウ~、とか面白いこと言ってる場合じゃない。僕はずぶ濡れになった。ホントにもう僕は案の定、非情にみじめなのであって、誰だ雨は大丈夫とか言ってた奴。出てこい返せ。
とか言っても大潮だからって海に出たのは僕なのだから、文句の言い様もない。単発でしか釣れない問題とともに、天気を読む能力も問題にしたいところである。
Tackle Data:
メガバス/XOR海煙C-83MH+シマノ/バイオマスターMg2500HGS+デュエル/スムーズ1号+同/フューズフロロ10lbs
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